推薦コメント

山田太一 脚本家・作家 *「ピース・キャッツ」より

映画『ミリキタニの猫』は、めったにない出会いにはじまり、めったにない出来事をきっかけに、めったにない共同生活を経て、これもめったにあるとはいえないひとまずの幸福なシーンで終るドキュメンタリイだが、見終わるとその「めったにないこと」が実は過去でも現代でもどこにでも起こりえる出会いであり悲劇であり希望でもあることを見事に語っていて、その柔らかくて力強いスケールの大きさに深い敬意を抱いた。

寺島進 俳優

ミリキタニさんは日本人の誇りで、大好きな映画です。

石内都 写真家

アーティストとして生きる信念を貫き通したミリキタニ氏の背景は日本とアメリカの戦争の歴史だった。2つの国の間でプライドを失うことなく見事な生き方が記録されている美しい映画である。

小林保彦 青山学院大学名誉教授

ミリキタニは、情念こそが創造を生む原動力と教える。広島の原爆投下への怒りの赤色が彼の行動原理のすべて。この映画に話者の生きた言葉がなす「対話」と情念を共有する「ドキュメンタリードラマ」の魅力のすべてがある。

矢内原美邦 ニブロール主宰、振付家

憎しみとともに生きてきたのかもしれない。それが自分を閉じ込め、苦しめてしまう。いろいろなことをあきらめてきたのかもしれない。人との出会いが、誰かを許し、なにかを忘れさせてくれることを、あらためて気づかせてくれた。憎しみを許して、またそこから生きていくのだな。きっと。

小山田壮平 ミュージシャン

時代に振り回されながら、ニューヨークの街角で絵を描き続けたミリキタニ。
猫と故郷の空と、戦争への怒り。
孤独の中、ひたむきに生きる姿に感動してボロ泣きでした。

最相葉月 ノンフィクションライター

ジミーの猫は万人受けしない。
愛嬌がない。
寝ても起きてもいない、とろんとした顔がない。
鋭い視線の先に何があるのか想像すると怖い。
そうか、これはジミーの目だ。
見ろ見ろ忘れるなと、
自分の目に焼き付けているのだ。

柴田元幸 翻訳家

ミリキタニさんの晩年に起きたような素晴らしい出来事が、たとえば2001年9月以後に不当な扱いを受けたアラブ系・イスラムの人たちにも起きたらいいなと思います。そういうことも起きうるのがアメリカという国だと思いたいです。

新井卓 写真家・ダゲレオタイピスト

きょう出会うかもしれない路上の人の人生が、広大な宇宙の入り口だとしたら。『ミリキタニの猫』は、わたしの世界をすっかり変えてしまった。目の前で紐解かれる<本当の話>に、唖然とし、涙しながら、連綿とつづく人の歴史を思う。

謝 孝浩 文筆家・アスリート

聖なる河を旅しているような時間だった。この年老いた路上画家の「描きたい!」という迸るほとばしるようなエネルギーはどこから湧き上がってくるのだろうか。その源泉を遡っているうちに、怒りをも超えた静謐な記憶の断片が重層的に露になった。

クラフト・エヴィング商會
(吉田浩美 吉田篤弘)作家・装幀家

ひさしぶりに本物の物語と出会った──。

ニューヨークの街角から始まった小さな友情が、
偶然に導かれて、思いがけないドラマを辿る。

ミリキタニの絵がそうであるように、
最初はモノクロのスケッチであったものが、
いつのまにか、見事に色あざやかな作品になっていた。

御徒町凧 詩人

ジミーの絵、部屋に飾りたいね
映画を観ながら妻と喋った
だけど家には二匹のネコがいるから
彼らをかわいがることにした

本谷有希子 作家・劇作家

アーティストがどういうものなのか、
初めて、
わかった気がする。

森山直太朗 歌手

彼はまごうことなく自らを「アーティスト」だと言う。
過酷にも見える人生の最中で亡くなった友のために
“アーティストであり続ける”という行為が唯一の弔いの形なのだと思った。

谷川俊太郎 詩人

国家と俗世間に対峙するアーティストとしての強い自恃、その姿には重みと同時に軽みもあって、自由のあり方を私たちに問いかける。

篠原勝之 ゲージツ家 KUMA

80歳の孤高のホームレス画家と若い映画監督が乗ったボートは、
9月11日を境に先の見えない水際を漂い、大河へと漕ぎだしていく。
極寒のニューヨークの地べたから始まった強靭で壮大な奇跡を見届けてほしい。

フランソワ・デュボワ 作曲家

長い時間と厳しい歴史の流れの中で、無用なものをとことんまでそぎ落としていったミリキタニ氏の「芸術家としての底力」が、画面いっぱいに迫ってくる素晴らしいドキュメンタリー。公開された10年前から、もう何度もくり返し観ては、その度に熱くなってしまわずにはいられません。

岡﨑乾二郎 造形作家

ジミー・ミリキタニが只者ではないと、出会った人はすぐに理解しただろう。芸術家とは、いかなる国家に収まることも、収められることもなく生きていく、生きていけることだ。かつてドロップアウトという言葉があって、帰る処なく(ホームレスで)生きることは、どこにもない場所=ユートピアを心に持ちつづけることを意味した。

あの忌まわしい収容所から外に出て以来、おおよそ60年間、ジミーは誇り高きヒーローだった。ジミー・ミリキタニは『路上』のケロアックと同世代だ。ジミーの誇りをいまや誰ももっていない。いや、ミリキタニを知っていることはわれわれの誇りとなるのだ。ジミーの名を唱えれば、どこでもわたしたちは生きていける気がする。

七尾旅人 シンガーソングライター

21世紀初頭のニューヨーク、偶然にカメラは回り始める。氷点下の路上で黙々と描き続ける、老いた日系人ホームレス画家の数奇な運命と、現在進行形の世界史が、9.11テロを境に激しく衝突し、折り重なりあい、やがて、かすかな希望が映し出されるまで。とても少人数のクルーで、個人と世界に光を投げかけ、広く深い射程を捉えきった、幾度となく再生され、いつまでも語り継がれるべき、ドキュメンタリーフィルムの孤独な傑作。

七尾旅人が熱い想いをつづった長文のコメントはこちら

Altneu (島地保武×酒井はな)/ダンサー

人の心の美しさを教えてくれる作品

自分をグランドマスターと言える誇りとユーモアあるお洒落なミリキタニ、

人の心の痛みがわかる最も自由なアーティストに憧れてしまう

山口洋HEATWAVE・ミュージシャン

アーティストであることに有名無名なんて関係ない。
彼の態度にこころ打たれたよ。
気高い。
混迷の時代を生き抜くために
彼の目がたくさんのことを教えてくれる。

鏡リュウジ 占星術研究家・翻訳家

どんな闇の中でも輝く人間の尊厳と誇りが存在する。
偉大な芸術とはそのことを伝える光の武器なのだ。
そう、ミリキタニは真の意味での芸術家だった。

ロバート・ハリス 作家・ラジオDJ

人間の魂の強さ、人と人との繋がりの尊さ、戦争というものの愚かさ、芸術というものが持つ不思議なパワー、そういったものを強く感じさせてくれるこの『ミリキタニの猫』と、ミリキタニさんの過去を解き明かしていく『ミリキタニの記憶』はこれからも日本の様々なアート系の映画館で上映されていくと思うので、心から皆さんにお勧めします。
9.11やアフガニスタンの空爆という暴力が蔓延る世界で、一人のアーティストの怒りと悲しみと、そして許しと和解のプロセスを描き上げたこのドキュメンタリー映画は、観る者すべてに深い感動と、生きる力を与えてくれる素晴らしい作品です。

アメリカの映画評

シネマティカル 於トライベッカ映画祭

ミリキタニの人生は間違いなく悲しみに満ちているけれど、映画は希望を与えてくれる。生きる力に満ちた意志の強いミリキタニという人間と共に過ごしたあなたは、
大きな贈り物をもらったと思えるだろう。

agnesvarnum.com

ジミー・ミリキタニの人間性の美しさと知性がこの映画の力だ。大げさな表現は嫌いだが、映画に世界を変える力があるとしたら、この作品がその素晴らしい一例だろう。